「借方は左?右?」
「現金が減ったのに、なぜ貸方に書くの?」
簿記3級を勉強し始めた人が、最初につまずきやすいのが借方・貸方の左右と、五要素の定位置です。
ここを丸暗記だけで進めると、仕訳問題で何度も手が止まります。
でも安心してください。
借方・貸方は、意味を深く考えるよりも、まずは左と右のルールとして覚えれば大丈夫です。
さらに、五要素の定位置を理解すると、
- 資産が増えたらどちらに書くのか
- 現金が減ったらなぜ貸方なのか
- 収益や費用はどちらに書くのか
が判断しやすくなります。
この記事では、簿記3級初心者向けに、借方・貸方の左右、五要素の定位置、仕訳で迷わない考え方をわかりやすく解説します。
借方・貸方とは?まずは「左」と「右」で覚える
簿記では、帳簿の左側を借方(かりかた)、右側を貸方(かしかた)と呼びます。
最初に大事なのは、次の2つです。
| 名前 | 位置 |
|---|---|
| 借方 | 左 |
| 貸方 | 右 |
「借りる」「貸す」という言葉が入っていますが、現在の簿記では、その言葉の意味を深く考える必要はありません。
まずは、
借方=左
貸方=右
という位置の名前だと考えましょう。
借方・貸方の覚え方
有名な覚え方は、ひらがなの形を使う方法です。
- か「り」かた → 「り」の払いが左に向かう → 借方は左
- か「し」かた → 「し」の払いが右に向かう → 貸方は右
試験中に迷ったときも、この覚え方を思い出せば、左右の判断がしやすくなります。
簿記の五要素とは?
借方・貸方を理解するには、簿記の五要素を押さえる必要があります。
簿記の五要素とは、次の5つです。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 費用
- 収益
簿記では、すべての勘定科目がこの5つのどれかに分類されます。
たとえば、
- 現金 → 資産
- 売掛金 → 資産
- 借入金 → 負債
- 資本金 → 純資産
- 給料 → 費用
- 売上 → 収益
というように分けられます。
この五要素には、それぞれ定位置があります。
五要素の定位置とは?
五要素の定位置とは、簡単にいうと、その要素が増えたときに書く場所です。
まずは次の表を覚えましょう。
| 五要素 | 定位置 |
| 資産 | 左(借方) |
| 負債 | 右(貸方) |
| 純資産 | 右(貸方) |
| 費用 | 左(借方) |
| 収益 | 右(貸方) |
まとめると、こうなります。
- 資産・費用 → 左
- 負債・純資産・収益 → 右
この形が、五要素の基本的なホームポジションです。
簿記3級では、この表を何も見ずに書けるようになることがとても大切です。
なぜ定位置を覚える必要があるのか
定位置を覚える理由は、仕訳のルールがすべてここから始まるからです。
仕訳では、次のように考えます。
- 増えたとき・発生したとき → 定位置側に書く
- 減ったとき・取り消したとき → 定位置の反対側に書く
たとえば、現金は資産です。
資産の定位置は左なので、現金が増えたら左に書きます。
一方、現金が減ったときは、定位置の反対側である右に書きます。
つまり、
- 現金が増える → 借方
- 現金が減る → 貸方
となります。
ここで大切なのは、「現金はいつも借方」ではないということです。
現金は資産なので、増えたときは借方です。
しかし、減ったときは貸方に書きます。
「増えたら借方」と覚えると間違える
初心者がよく間違えるのが、次の覚え方です。
「増えたら借方」
これは正しくありません。
正しくは、
増えたら、その要素の定位置に書く
です。
資産や費用は、定位置が左なので、増えたら借方です。
しかし、負債・純資産・収益は、定位置が右なので、増えたら貸方です。
たとえば、売上は収益です。
収益の定位置は右です。
そのため、売上が発生したら貸方に書きます。
このように、すべてを「増えたら借方」と覚えると、収益や負債で必ず混乱します。
必ず、
定位置に増える
反対側に減る
と覚えましょう。
貸借対照表と損益計算書で考える
五要素は、財務諸表とも関係しています。
簿記3級で出てくる主な財務諸表は、次の2つです。
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
貸借対照表は、会社の財産の状態を表す書類です。
ここには、
- 資産
- 負債
- 純資産
が出てきます。
一方、損益計算書は、会社のもうけを表す書類です。
ここには、
- 費用
- 収益
が出てきます。
整理すると、次のようになります。
| 財務諸表 | 五要素 | 定位置 |
| 貸借対照表 | 資産 | 左 |
| 貸借対照表 | 負債 | 右 |
| 貸借対照表 | 純資産 | 右 |
| 損益計算書 | 費用 | 左 |
| 損益計算書 | 収益 | 右 |
この表を見ても、
- 資産・費用は左
- 負債・純資産・収益は右
という形になっています。
仕訳の基本ルール
ここからは、実際の仕訳で見ていきます。
仕訳では、必ず次の順番で考えます。
- 勘定科目を考える
- それが五要素のどれかを考える
- 増えたのか、減ったのかを考える
- 定位置か反対側かを判断する
この順番で考えると、借方・貸方を感覚で決める必要がなくなります。
資産の仕訳例
現金1,000円を借り入れた
銀行から現金1,000円を借り入れた場合を考えます。
この取引では、
- 現金が増える
- 借入金が増える
という2つの動きがあります。
現金は資産です。
資産の定位置は左なので、現金が増えたら借方に書きます。
借入金は負債です。
負債の定位置は右なので、借入金が増えたら貸方に書きます。
仕訳は次のようになります。
(借)現金 1,000 / (貸)借入金 1,000
資産が減る仕訳例
備品200円を現金で買った
備品200円を現金で買った場合を考えます。
この取引では、
- 備品が増える
- 現金が減る
という動きがあります。
備品は資産です。
資産が増えるので、借方に書きます。
一方、現金も資産ですが、今回は減っています。
資産が減るときは、定位置の反対側である貸方に書きます。
仕訳は次のようになります。
(借)備品 200 / (貸)現金 200
ここが初心者のつまずきやすいポイントです。
現金は資産なので、定位置は借方です。
しかし、今回は現金が減っているため、貸方に書きます。
負債の仕訳例
買掛金500円を現金で支払った
買掛金500円を現金で支払った場合を考えます。
この取引では、
- 買掛金が減る
- 現金が減る
という動きがあります。
買掛金は負債です。
負債の定位置は右です。
今回は買掛金が減っているので、定位置の反対側である借方に書きます。
現金は資産です。
資産の定位置は左ですが、今回は現金が減っています。
そのため、貸方に書きます。
仕訳は次のようになります。
(借)買掛金 500 / (貸)現金 500
純資産の仕訳例
出資を受けて現金3,000円を受け取った
株主から出資を受けて、現金3,000円を受け取った場合を考えます。
この取引では、
- 現金が増える
- 資本金が増える
という動きがあります。
現金は資産です。
資産が増えるので、借方に書きます。
資本金は純資産です。
純資産の定位置は右なので、資本金が増えたら貸方に書きます。
仕訳は次のようになります。
(借)現金 3,000 / (貸)資本金 3,000
費用の仕訳例
給料800円を現金で支払った
従業員に給料800円を現金で支払った場合を考えます。
この取引では、
- 給料という費用が発生する
- 現金が減る
という動きがあります。
給料は費用です。
費用の定位置は左なので、給料が発生したら借方に書きます。
現金は資産です。
今回は現金が減っているので、貸方に書きます。
仕訳は次のようになります。
(借)給料 800 / (貸)現金 800
費用は「発生したら借方」と覚えると、判断しやすくなります。
収益の仕訳例
商品5,000円を掛けで販売した
商品5,000円を販売し、代金は後日受け取ることにした場合を考えます。
この取引では、
- 売掛金が増える
- 売上が発生する
という動きがあります。
売掛金は資産です。
資産が増えるので、借方に書きます。
売上は収益です。
収益の定位置は右なので、売上が発生したら貸方に書きます。
仕訳は次のようになります。
(借)売掛金 5,000 / (貸)売上 5,000
ここでも、「増えたら借方」ではありません。
売上は収益なので、発生したら貸方です。
初心者が間違いやすいポイント
1. 現金はいつも借方だと思ってしまう
現金は資産なので、増えたときは借方です。
しかし、減ったときは貸方です。
「現金=借方」と覚えるのではなく、
現金が増えたら借方、減ったら貸方
と覚えましょう。
2. 売上を借方に書いてしまう
売上は収益です。
収益の定位置は貸方です。
そのため、売上が発生したら貸方に書きます。
売上は金額が増えるイメージがあるため、借方に書きたくなるかもしれません。
しかし、収益は右側が定位置です。
3. 負債が減ったときに迷う
借入金や買掛金などの負債は、増えたときは貸方です。
しかし、返済や支払いで減ったときは借方に書きます。
たとえば、借入金を返済した場合、借入金は減るので借方です。
借方・貸方を判断する練習方法
借方・貸方が苦手な人は、いきなり仕訳問題をたくさん解くよりも、まずは五要素の定位置を確認する練習がおすすめです。
たとえば、白紙に大きくT字を書きます。
左側に、
- 資産
- 費用
右側に、
- 負債
- 純資産
- 収益
を書きます。
これを何も見ずに書けるようになるまで練習しましょう。
次に、よく出る勘定科目を五要素に分類します。
| 勘定科目 | 五要素 |
| 現金 | 資産 |
| 売掛金 | 資産 |
| 買掛金 | 負債 |
| 借入金 | 負債 |
| 資本金 | 純資産 |
| 給料 | 費用 |
| 仕入 | 費用 |
| 売上 | 収益 |
ここまでできると、仕訳の判断がかなり楽になります。
実務視点で見る借方・貸方
借方・貸方は、試験のためだけのルールではありません。
実務でも、会社のお金の流れを整理するために使われます。
大きく見ると、借方と貸方には次のような意味があります。
- 借方:お金がどのような形で使われているか
- 貸方:お金がどこから来たのか
たとえば、現金を借り入れた場合、
(借)現金 / (貸)借入金
となります。
これは、
- 左側:現金という形でお金を持っている
- 右側:そのお金は借入金によって調達した
という意味です。
このように考えると、借方・貸方は単なる暗記ではなく、会社のお金の流れを表す仕組みだとわかります。
簿記3級の段階では、まずは試験で使える形で覚えれば十分です。
ただ、余裕があれば、
左はお金の使い道、右はお金の出どころ
というイメージも持っておくと、理解が深まります。
FAQ:借方・貸方の定位置でよくある質問
Q1. 借方と貸方は丸暗記するしかありませんか?
最初はある程度、暗記が必要です。
ただし、丸暗記だけではなく、五要素の定位置とセットで覚えると理解しやすくなります。
おすすめは、
- 借方=左
- 貸方=右
- 資産・費用=左
- 負債・純資産・収益=右
の順番で覚えることです。
Q2. なぜ「借方」「貸方」という言葉を使うのですか?
歴史的な名残はありますが、簿記3級の学習では、言葉の意味を深く考えすぎなくて大丈夫です。
現在の簿記では、
- 借方=左
- 貸方=右
という位置の名前として覚えるのが実用的です。
Q3. 借方・貸方を逆に書くとどうなりますか?
基本的には不正解になります。
借方・貸方は、単なる配置ではなく、増減や発生の意味を表しています。
左右を逆に書くと、取引の意味が変わってしまいます。
そのため、金額が合っていても、借方・貸方が逆なら正しい仕訳にはなりません。
Q4. 五要素のどれにも当てはまらない勘定科目はありますか?
基本的にはありません。
簿記で使う勘定科目は、資産・負債・純資産・費用・収益のどれかに分類されます。
ただし、減価償却累計額のように、少し特殊な扱いをする科目もあります。
簿記3級の最初の段階では、まず基本的な勘定科目を五要素に分類できるようにしましょう。
Q5. 仕訳で毎回迷う場合はどうすればいいですか?
まずは、勘定科目を五要素に分類する練習をしましょう。
仕訳で迷う原因は、借方・貸方そのものよりも、
「この勘定科目は資産なのか、費用なのか」
があいまいなことにあります。
勘定科目の分類ができるようになると、借方・貸方の判断も楽になります。
まとめ:借方・貸方は「定位置」で考える
借方・貸方は、簿記3級の最初の大きな壁です。
しかし、考え方はとてもシンプルです。
まずは、次のルールを押さえましょう。
- 借方は左
- 貸方は右
- 資産・費用は左
- 負債・純資産・収益は右
- 増えたら定位置
- 減ったら反対側
特に大切なのは、
定位置=増えたときに書く場所
と考えることです。
「増えたら借方」と覚えるのではなく、
その要素の定位置に増える
と覚えましょう。
これがわかると、現金が減ったときに貸方へ書く理由や、売上が発生したときに貸方へ書く理由も理解しやすくなります。
借方・貸方で迷う人は、まず白紙にT字を書いて、五要素の定位置を書き出してみてください。
左に資産・費用。
右に負債・純資産・収益。
この形が自然に出てくるようになると、仕訳の理解が一気に進みます。
次に読むなら
借方・貸方の定位置がわかっても、実際の仕訳問題になると、
- 勘定科目が覚えられない
- どちらに書くか迷う
- 問題文を読むと手が止まる
- 勉強が続かない
という悩みが出てきやすいです。
簿記3級は、知識を一つずつつなげていくことが大切です。
基礎から順番に理解したい方は、簿記初心者向けの記事まとめもあわせて読んでみてください。


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