簿記の勉強を始めると、「お店の商売って、どうやって帳簿に記録するのだろう」と疑問に思いませんか。

商品を売買したのに『商品』って科目を使わないのはなぜですか?

その疑問、大正解です!
実は、計算をラクにするための素晴らしい工夫があるんですよ。
簿記には、一見遠回りに見えて、実はとても合理的なルールがあります。
ここを乗り越えれば、日々の仕訳が一気にパズルのように楽しく解けるようになります。
この記事で、商品売買の基本をスッキリとマスターしましょう。
- 商品売買と三分法の基本的な考え方
- 仕入・売上・掛取引の基本的な仕訳
- 諸掛りや返品などの注意点
結論:商品売買とは「仕入れて売る」企業の基本活動
商品売買とは、仕入れた商品を販売して利益を得る企業の基本的な営業活動です。
例えば、お店がメーカーから商品を仕入れ、それをお客様に販売する取引が商品売買にあたります。
簿記では、この取引を「仕入」と「売上」を中心に記録していきます。
そして日商簿記3級では、商品売買を記録する際に「三分法」という方法を用いるのが基本です。
商品売買は「モノの動き」で記録する
簿記では、日々の記録をシンプルにするために「三分法(さんぶんぽう)」という仕組みを使います。
そして、仕訳を起こすタイミングは、「現金のやり取りがあった時」ではなく、「モノの受け渡しがあった時」です。
商品売買の仕訳を理解するためには、この2つの原則さえ押さ得てください。
三分法について詳しく知りたい方は「三文法とは」という記事をご覧ください。
なぜ「三分法」で記録するのか
日商簿記3級では、商品を「商品」という1つの科目で記録しません。
代わりに、三分法という「仕入(費用)」「売上(収益)」「繰越商品(資産)」の3つの引き出しに分けて記録する方法を使います。
それは、毎回「いくら儲かったか」を計算するのが、実務上で非常に面倒だからです。
例えば、100円で仕入れたものを150円で売ったとします。
取引のたびに「商品が100円分減って、利益が50円出て……」と計算するのは手間がかかります。
そこで、日々の取引では単に「仕入100」「売上150」と、事実だけをシンプルにメモしていきます。
そして、本当の利益の計算は、1年の終わりの「決算」でまとめて行うのです。
この「普段はシンプルに、利益は最後に出す」という姿勢が、簿記の合理的なスタイルです。
また、決算時には売れ残った商品を翌期へ繰り越すため、「繰越商品」という勘定科目を使います。
商品有高帳とは
商品有高帳とは、商品の仕入・売上・在庫の増減を継続的に記録する補助簿です。
三分法では、日々の仕訳で商品の増減を直接記録しません。
そのため、商品の数量や仕入単価、在庫残高などを管理するために商品有高帳が利用されます。
簿記3級では、先入先出法や移動平均法による払出単価の計算問題が出題されることがあります。
商品有高帳の記入方法や計算問題については、「商品有高帳とは」という記事で詳しく解説しています。
商品売買代金の後払い
売った商品の代金を後で受け取る権利のことを、売掛金(資産)と呼びます。
また、買った代金を後で支払う義務のことを、買掛金(負債)と呼びます。
ビジネスでは、モノの動きとお金の動きにずれがあることが多いですが、「モノの受け渡しがあった時」に仕入、売上の仕訳をします。
買掛金や売掛金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
商品の売上
商品を売り上げた時は、右側(貸方)に「売上(収益)」を記入します。
商品を売ることは、企業の主たる「収益の発生」だからです。
売上の計上も、お金をもらった時ではなく、「商品を引き渡した時」が正解です。
【例題①】
商品150,000円を売り上げ、代金は掛けとした。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 100,000円 | 売上 | 100,000円 |
商品の仕入
商品を仕入れた時は、左側(借方)に「仕入(費用)」を記入します。
商品を仕入れることは、ビジネスを行う上での「費用の発生」と考えるためです。
仕入のタイミングは、お金を払った時ではなく、「商品を受け取った時」に仕訳をします。
【例題②】
商品100,000円を仕入れ、代金は現金で支払った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 |
【例題③】
商品100,000円を仕入れ、代金は掛けとした。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 100,000円 | 買掛金 | 100,000円 |
「送料(諸掛り)」の扱い方
受験生が一番つまずきやすいのが、商品を送るときにかかる送料などの「諸掛り(しょがかり)」の扱いです。
これは「仕入時」か「売上時」かで、処理が全く異なります。
- 仕入諸掛り(当社負担):「仕入」勘定の金額に含める
- 売上諸掛り(当社負担):「発送費(費用)」勘定で別個に処理する
なぜ、扱いが違うのでしょうか。
仕入にかかった送料は「商品を手に入れるために仕方のない投資(原価)」と考えます。
一方で、売上時の送料は「販売するためのサービス」として、単独の費用(発送費)で処理するからです。
諸掛りの種類や当社負担・先方負担の違いについては「諸掛りとは」で詳しく解説しています。
「返品」が起きた時のスマートな直し方
ビジネスでは、品違いなどで商品が戻ってくる「返品」が発生します。
この場合は、売買した時の仕訳を完全にひっくり返す「逆仕訳」を行います。
「なかったことにする」ために、反対側に記入して金額を相殺するのが、簿記の最も確実な修正方法です。
【例題④】
売り上げた商品のうち、10,000円分が品違いのため返品された。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 10,000円 | 売掛金 | 10,000円 |
元の売上記録を取り消すために、「売上」の減少となり左側に、「売掛金」の減少となり右側になります。
返品や手付金の仕訳について詳しく学びたい方こちらの記事もあわせて確認しましょう。
返品のあとの「純額」を意識する
試験では、1年間の取引を集計する問題が出ます。
その際、返品を引く前の金額を「総仕入高」や「総売上高」と呼びます。
そこから返品を引いた、本当の金額を「純仕入高」や「純売上高」と呼びます。
簿記の試験では、最終的にこの「純額」をベースに利益を計算することになります。
日々の仕訳だけでなく、集計の際にも返品分をしっかりと差し引く意識を持っておきましょう。
商品売買と売上原価の関係
商品売買では、仕入と売上を記録するだけでなく、最終的に「いくら利益が出たのか」を計算する必要があります。
その際に使われるのが売上原価です。
売上原価とは、売れた商品に対応する仕入原価のことで、決算時に計算します。
簿記3級では、期首商品棚卸高・当期商品仕入高・期末商品棚卸高を使って売上原価を求める問題が出題されます。
売上原価の詳しい計算方法については、こちらの記事で解説しています。
FAQ
- Qなぜ「商品」という名前の勘定科目を使わないのか?
- A
三分法では、日中の取引で「商品」という資産勘定を動かしません。
代わりに「仕入(費用)」と「売上(収益)」を使います。
こうすることで、1年間に「買った総額」と「売った総額」が、帳簿を見ただけで一目で把握できるようになるからです。
- Q「売掛金」と「買掛金」、どっち?
- A
簿記の言葉で「掛け(かけ)」は「後払い」という意味です。 動詞に注目して覚えましょう。 ・売ったときの権利 = 売掛金(資産) ・買ったときの義務 = 買掛金(負債) 言葉の頭文字を意識すると、ごちゃごちゃにならずに整理できます。
- Q送料を相手が払うはずなのに、当社が立て替えた場合はどうする?
- A
その場合は、当社の仕入原価には含めません。
「立替金(資産)」という、あとで返してもらう権利として処理します。
または、相手に対する「買掛金」のマイナスとして処理することもあります。
問題文の「誰が負担するか」をよく読みましょう。
まとめ:商品売買は会社の活動を読み解く第一歩
商品売買を理解すると、会社がどのように利益を生み出しているのかを数字で追えるようになります。
最初は「三分法」や「売掛金・買掛金」などの言葉に戸惑うかもしれません。
しかし、商品を仕入れて販売し、その代金を回収するという流れ自体は、とてもシンプルです。
簿記3級で学ぶ多くの論点は、この商品売買の流れを土台として発展していきます。
商品売買の考え方が身につけば、諸掛りや返品、売上原価といった関連論点も理解しやすくなり、仕訳問題にも自信を持って取り組めるようになります。
まずは商品が動いたときに仕訳を行うという基本ルールをしっかり押さえ、簿記の基礎を固めていきましょう。
- 商品売買は「仕入」と「売上」を中心に記録する
- 商品売買の仕訳は「モノの受け渡し」が基準になる
- 諸掛りや返品は出題されやすい重要論点である
ここまで読んでいただきありがとうございます。
簿記は、一度で完璧に理解しようとすると挫折しやすい学習です。
少しずつ知識を積み重ねながら、簿記全体の流れを理解していきましょう。
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