SNSやニュースで「簿記」という言葉を聞いて、その仕組みが気になったことはありませんか。

商品売買の仕訳に出てくる「三分法」って何?
言葉の意味が難しくて、さっそく挫折しそう。

大丈夫ですよ!
三分法は、日々の作業を圧倒的にラクにする「スピード重視」の賢い仕組みです。
仕組みがわかれば、パズルのように楽しく解けますよ。
三分法は、簿記3級の商品売買で最もよく使われる記帳方法です。
一見すると遠回りに見えますが、実は大量の取引を効率よく処理するための合理的な仕組みになっています。
まずは「なぜ三分法が使われるのか」から見ていきましょう。
- 三分法を使う理由とメリット
- 商品売買における日々の仕訳ルール
- 決算整理「しいくり、くりし」の仕組み
結論:三分法は商品売買を効率化する記帳方法
簿記3級の試験でメインとなるのが、この「三分法(さんぶんぽう)」という記帳方法です。
三分法とは、商品売買を「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定科目に分けて記録する方法をいいます。
なぜ、わざわざ3つに分けるのでしょうか。
それは、日々の取引のたびに「いくら儲かったか」を計算する手間を省き、大量の取引をスピーディーに処理するためです。
例えば、100円で仕入れた商品を150円で売ったとします。
その場で「50円の利益が出た」と計算して記録するのは、商品の数が多くなると非常に大変です。
そこで三分法では、利益はその場で計算しません。
単に「仕入 100」「売上 150」と、起きた事実だけを記録していきます。
このように、普段の処理はシンプルに済ませ、利益の計算は「1年の最後にまとめて行う」という合理的な姿勢こそが、三分法が実務で広く採用されている理由です。
三分法の日々の仕訳ルール
三分法では、商品を「買った時」「売った時」「年度をまたぐ時」で、使う科目が決まっています。
勘定科目を明確に分けることで、1年間の「仕入れた総額」と「売り上げた総額」を区別し、会社の業績を表す損益計算書を正しく作れるようになります。
具体的な3つの役割と仕訳の例を見ていきましょう。
商品を買った時
商品を買った時は、「仕入」勘定を使います。
「仕入」は費用のグループです。
【例題】商品1,000円を仕入れ、代金は現金で支払った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 |
商品の購入にかかった代金を、そのまま費用の発生として記録します。
現金の減少という資産の減少と、仕入の発生という費用の発生が同時に起きています。
商品を売った時
商品を売り上げた時は、「売上」勘定を使います。
「売上」は収益のグループです。
【例題】商品(仕入値1,000円)を1,500円で売り上げ、代金は現金で受け取った。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 1,500円 | 売上 | 1,500円 |
ここで注目したいのは、売上の仕訳に「仕入値の100円」は一切登場しない点です。
売れた金額である150円だけを、収益の発生として記録します。
現金の増加という資産の増加と、売上の発生という収益の発生が同時に起きています。
期末に残った在庫
1年の終わり(期末)に売れ残った商品は、「繰越商品(くりこししょうひん)」勘定で表します。
「繰越商品」は資産のグループです。
繰越商品勘定は、前期から引き継いだ商品や期末に残った商品を表す資産勘定です。
決算整理で売上原価を計算する
日々の仕訳をシンプルにこなした分、1年の終わりである「決算」のときには、在庫を調整する決算整理仕訳が必要です。
この目的は、今年売れた商品の本当のコストである「売上原価(うりあげげんか)」を正しく計算することにあります。
売上原価は、以下の公式で計算します。
この計算を帳簿上で行うために、有名な「しいくり、くりし」という呪文のような仕訳を行います。
「しいくり」は『仕入へ繰り入れる』、「くりし」は『繰越商品へ振り替える』という意味の語呂合わせです。
【決算整理仕訳のパターン】
- 期首の在庫を仕入へ
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | ×× | 繰越商品 | ×× |
- 期末の在庫を仕入から引く
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 繰越商品 | ×× | 仕入 | ×× |
この仕訳をすることで、今年売れずに残った商品を「仕入(費用)」から差し引いて「繰越商品(資産)」へ移し、逆に去年の残りを今年のコストに加えることができます。
このステップを経て初めて、正しい売上原価が計算され、売上から売上原価を引いた本当の儲けである「売上総利益(うりあげそうりえき)」を導き出すことができます。
なお、帳簿上で「仕入」に集められたコストは、決算書である損益計算書では「売上原価」という分かりやすい名前に着替えて表示されます。
なぜ簿記3級では三分法を使うのか
三分法に対して、分記法(ぶんきほう)という記帳方法があります。
分記法は、商品を売るたびに原価と利益を計算する方法です。
例えば1,000円で仕入れた商品を1,500円で販売した場合、分記法では商品(資産)の減少と商品売買益(収益)を同時に記録します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 1,500円 | 商品 | 1,000円 |
| 商品売買益 | 500円 |
そのため、1回の取引ごとに利益を把握できるという特徴があります。
実務や簿記3級では三分法が主流
しかし、商品が数百種類、数千種類とある実務では、販売のたびに利益を計算するのは大きな負担になります。
そこで実務や日商簿記3級では、まず「仕入」と「売上」だけを記録し、決算時にまとめて利益を計算する三分法が採用されています。
簿記3級の学習では、まず三分法をしっかり理解することが重要です。
分記法は「利益をその都度計算する方法もある」と知っておく程度で十分でしょう。
試験対策:三分法でよく出るポイント
簿記3級では、三分法に関する問題が頻繁に出題されます。
特に「売上原価の計算」「分記法との違い」「諸掛りの処理」は得点差がつきやすいポイントです。
ここでしっかり整理しておきましょう。
売上原価計算は「しいくり、くりし」を理解する
三分法では、日々の取引では利益を計算せず、決算時に売上原価を求めます。
売上原価は次の式で計算します。
期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 − 期末商品棚卸高
この計算を帳簿上で行うために、「しいくり、くりし」の決算整理仕訳を行います。
単なる語呂合わせとして暗記するだけでなく、
- 期首商品を仕入に加える
- 期末商品を仕入から差し引く
という意味まで理解しておくことが大切です。
分記法との違いを押さえる
分記法は、商品を販売するたびに原価と利益を計算する方法です。
例えば、100円で仕入れた商品を150円で販売した場合、分記法では商品100円の減少と利益50円を同時に記録します。
一方、三分法では売上150円だけを記録し、利益は決算時にまとめて計算します。
試験では「三分法と分記法の特徴の違い」を問われることがあります。
- 三分法:日々の処理が簡単
- 分記法:取引ごとに利益が分かる
という違いを整理しておきましょう。
諸掛りの処理を覚える
商品の仕入や販売には送料などの費用が発生することがあります。
これを諸掛りといいます。
仕入時に当社が負担した送料は、商品を仕入れるために必要なコストなので「仕入」勘定に含めます。
一方、販売時の送料は「発送費」などの費用として別に処理します。
試験では、
- 仕入諸掛り → 仕入に含める
- 売上諸掛り → 発送費などで処理する
という基本ルールを正確に覚えておきましょう。
FAQ
- Qなぜ「商品」という名前の勘定科目を使わないのか?
- A
三分法では、資産としての在庫を「繰越商品」という特別な名前で呼びます。
これは、「前期から繰り越されてきた(期首にある)商品」であることを明確に区別し、日々の「仕入」作業と混ざらないようにするためです。
- Qもうひとつの「分記法」との違いは?
- A
分記法は、取引のたびに「商品(資産)」の減少と「商品売買益(収益)」という利益を同時に計算する方法です。
しかし、商品が数千種類もある実務では、毎回利益を計算するのは非常に手間(計算コスト)がかかります。
そのため、日商簿記3級の試験や実務では、一括して後で計算する「三分法」が主流となっています。
- Qなぜ仕入時に資産ではなく費用で処理するの?
- A
三分法は日々の処理を簡単にするため、商品を購入した時点で一旦「仕入」という費用勘定に集計します。
その後、決算整理で売れ残った分だけを「繰越商品」という資産へ振り替える仕組みです。
まとめ:三分法を理解すると決算整理がつながる
三分法は、日々の取引では「仕入」と「売上」を記録し、決算で「繰越商品」を調整することで正しい利益を計算する仕組みです。
一見遠回りに見えますが、大量の取引を効率よく処理するための合理的な方法です。
次に学ぶ「決算整理」では、この考え方がさらに重要になりますので、ぜひ「しいくり、くりし」の意味まで理解しておきましょう。
- 三分法は仕入・売上・繰越商品の3勘定で管理する
- 日々は利益を計算せず取引を効率よく記録する
- 決算整理の「しいくり、くりし」で正しい売上原価を求める
ここまで読んでいただきありがとうございます。
簿記は、一度で完璧に理解しようとすると挫折しやすい学習です。
少しずつ知識を積み重ねながら、簿記全体の流れを理解していきましょう。
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