簿記3級を取得したものの、
「実際の経理の仕事ではどこまで使えるんだろう?」
「簿記3級があれば経理の仕事ができる?」
と気になっていませんか。
簿記3級では、仕訳や勘定科目、試算表、決算の基本などを学びます。
これらは実際の経理業務でも使う、会計の基本的な知識です。
ただし、簿記3級を取得したからといって、経理業務のすべてができるようになるわけではありません。
実務では、簿記の知識に加えて、請求書や領収書などの資料を確認したり、会計ソフトを操作したり、会社ごとのルールに沿って処理したりする必要があります。
この記事では、簿記3級で学んだ知識が実務でどのように役立つのか、反対に簿記3級の知識だけでは難しいことは何なのかを解説します。
簿記3級の知識は実務で使える
結論からいうと、簿記3級の知識は実際の経理・会計業務で使えます。
むしろ、経理の仕事を覚えるうえで、簿記3級で学ぶ内容は基本的な土台になります。
例えば、経理業務では日々の取引を仕訳にしたり、会計ソフトへ入力したり、売掛金や買掛金の残高を確認したりします。
そのとき、
「これは売掛金の取引だな」
「この支払いは費用として処理するんだな」
「この仕訳をすると、貸借対照表ではどこが動くんだろう」
と考えられるのは、簿記を学んでいるからこそです。
ただし、ここで注意したいのは、
簿記3級の知識が実務で使えることと、簿記3級を持っていれば経理業務を一人ですべてできることは別
ということです。
では、具体的にどのような場面で3級の知識が役立つのでしょうか。
簿記3級の知識を使える実務
仕訳の基本を理解する
簿記3級で学ぶ仕訳は、経理実務の基本です。
例えば、
- 商品を販売した
- 商品を仕入れた
- 現金を受け取った
- 預金口座に入金された
- 経費を支払った
- 給料を支払った
- 借入金を返済した
といった日常的な取引について、どのような仕訳になるのかを考えます。
実務では、問題文に「この仕訳をしてください」と書かれているわけではありません。
請求書や領収書、通帳などの資料を確認して、「これはどのような取引なのか」を把握したうえで会計処理を行います。
それでも、仕訳の基本的な考え方を知っていれば、実務を覚えるための土台になります。
勘定科目の意味を理解する
簿記3級では、さまざまな勘定科目を学びます。
例えば、
- 現金
- 普通預金
- 売掛金
- 買掛金
- 備品
- 借入金
- 売上
- 仕入
- 給料
- 支払手数料
などです。
実務では会計ソフトの画面や総勘定元帳などで、これらの勘定科目を日常的に目にします。
勘定科目が何を意味しているのかを知っていれば、会計データを見たときにも内容を理解しやすくなります。
売掛金・買掛金を管理する
簿記3級で学ぶ売掛金や買掛金も、実務でよく登場します。
例えば、商品を販売してまだ代金を受け取っていない場合は売掛金になります。
その後、実際に入金されたら売掛金が減り、預金が増えます。
実務では、
「請求した金額が入金されているか」
「まだ回収できていない売掛金はどれくらいあるか」
などを確認することがあります。
簿記3級で学んだ「売ったこと」と「お金を受け取ったこと」は別の取引だという考え方が、ここで役立ちます。
現金・預金の残高を確認する
現金や預金も、簿記3級の基本的な学習範囲です。
実務では、帳簿上の残高と実際の現金や預金残高が一致しているかを確認することがあります。
例えば、通帳の入出金と帳簿の記録を照らし合わせ、
「この入金は何の取引か」
「この支払いは帳簿に記録されているか」
などを確認します。
単に数字を入力するだけではなく、帳簿上の数字と実際のお金の動きを結びつけることが重要です。
試算表や財務諸表を見る
簿記3級では、仕訳を積み重ねた結果として試算表や財務諸表が作られることを学びます。
実務でも、月次の試算表や決算書を見る場面があります。
例えば、
「売上はどのくらいあるか」
「経費が先月より増えていないか」
「預金残高はどうなっているか」
などを確認します。
もちろん、実務で数字を分析するためには3級より先の知識が必要になることもあります。
それでも、貸借対照表や損益計算書が何を表しているのかを知っていることは、実務を理解するうえで大きな土台になります。
簿記3級の知識だけでは難しいこと
ここまで見ると、「では簿記3級を取れば経理の仕事は全部できるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、実際にはそうではありません。
簿記3級で学ぶのは、あくまで会計の基本的な考え方です。
実務では、簿記の知識だけでは判断できないことや、実際の経験が必要になることがあります。
複雑な取引の処理
実際の会社では、簿記3級で扱う基本的な取引だけでなく、より複雑な取引も発生します。
例えば、
- 有価証券
- リース
- 外貨建取引
- 固定資産に関する複雑な処理
- 引当金
- 連結会計
などです。
こうした内容には、簿記2級や1級などで学ぶ論点も含まれます。
もちろん、実務では資格の級だけで処理できる範囲が決まるわけではありません。
会社の業務内容や、担当する仕事によって必要な知識は異なります。
決算を一人ですべて行う
簿記3級でも決算整理について学びます。
しかし、実際の決算では、学習問題よりも多くの確認や処理が必要になります。
例えば、
- 売上や仕入の計上確認
- 売掛金・買掛金の残高確認
- 未収・未払の確認
- 固定資産の確認
- 減価償却
- 各種引当金
- 棚卸資産の確認
- 税金に関する処理
などです。
そのため、
「決算整理仕訳を解ける」ことと「実際の会社の決算を一人で完了できる」ことは同じではありません。
実務では、資料を集め、残高を確認し、前年や前月と比較し、必要な処理を判断するといった作業も必要になります。
税務上の判断
ここは簿記と実務を分けて考えるうえで重要なところです。
例えば、
「この支出は経費になるのか」
「消費税はどのように処理するのか」
「どの年度の費用になるのか」
といった判断には、簿記だけでなく税務の知識が関係する場合があります。
簿記では「仕訳としてどう処理するか」を学びますが、実務ではその前段階として、
そもそもこの取引をどのように扱うべきなのか
を確認しなければならないことがあります。
そのため、簿記3級の知識だけですべての税務判断ができるわけではありません。
イレギュラーな取引への対応
簿記の問題では、基本的に必要な情報が問題文に書かれています。
しかし実務では、
「いつもと違う請求書が届いた」
「この入金が何の入金なのか分からない」
「前年と同じ処理でいいのか分からない」
といったことが起こります。
その場合には、取引の内容を確認したり、過去の処理を調べたり、社内の担当者に確認したりする必要があります。
つまり、実務では「知っている仕訳を当てはめる力」だけでなく、「分からないことを確認して処理する力」も必要になります。
実務では簿記以外の知識も必要になる
簿記3級を取得しても、実際の経理業務を始めると新しく覚えることがたくさんあります。
会計ソフトの操作
簿記の知識があっても、会計ソフトを操作できるとは限りません。
どの画面から入力するのか、どの項目を確認するのか、データをどのように修正するのかなど、ソフトごとの操作方法を覚える必要があります。
請求書や領収書などの資料の確認
実務では、問題文ではなく実際の資料を見て取引内容を判断します。
請求書、領収書、通帳、契約書など、取引に関する資料から必要な情報を読み取ることも重要です。
会社ごとのルール
同じような取引でも、会社によって処理方法や勘定科目の使い方が決められている場合があります。
そのため、簿記の教科書に書かれている処理だけでなく、勤務先のルールを理解する必要があります。
Excelなどの周辺スキル
経理では、会計ソフトだけですべてが完結するとは限りません。
データを集計したり、残高を照合したり、資料を作成したりするために、Excelなどを使うこともあります。
このように、実務では簿記以外の知識やスキルも組み合わせて仕事を進めます。
簿記3級と実務経験は別のもの
簿記3級で身につくのは、会計の基本的な考え方です。
一方、実務経験を通して身につくのは、実際の取引を確認し、必要な処理を行う経験です。
例えば、簿記の問題では、
商品を100万円で掛けで販売した。
と書かれていれば、売掛金と売上を使った仕訳を考えます。
しかし実務では、
「この請求書は何の取引なのか」
「いつの売上なのか」
「金額は合っているか」
「入金されたらどの売掛金に充当するのか」
など、仕訳をする前後にも確認することがあります。
そのため、簿記3級の知識と実務経験は、どちらか一方だけあればよいというものではありません。
簿記で基本を学び、実務で実際の取引に触れることで、知識がより具体的になっていきます。
実務に就かなくても、簿記の知識を使ってみる
実際に経理の仕事をする予定がなくても、簿記3級で学んだ知識を使ってみることはできます。
例えば、実際の企業の決算書を見たり、ニュースに出てくる売上や利益を確認したりする方法です。
「売上が増えたのに利益はどうなった?」
「利益が出ているのに、なぜ現金がそれほど増えていない?」
といった疑問を持ちながら数字を見ると、簿記で学んだ内容が実際の会社とつながってきます。
簿記3級の知識を、実際の数字に当てはめて使ってみる方法については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
まとめ:簿記3級は実務を学ぶための土台になる
簿記3級で学ぶ仕訳や勘定科目、売掛金・買掛金、現金・預金、試算表、財務諸表などの知識は、実際の経理・会計業務でも使われます。
そのため、簿記3級は実務に役立たない資格ではありません。
一方で、簿記3級の知識だけで経理業務のすべてができるわけでもありません。
実務では、
- 会計ソフトの操作
- 請求書や領収書などの資料確認
- 会社ごとの経理ルール
- 税務に関する知識
- イレギュラーな取引への対応
- 実際の決算業務
など、簿記以外の知識や経験も必要になります。
だからこそ、簿記3級を取得したら、
「3級で全部できるようにならなければ」と考える必要はありません。
まずは簿記3級で学んだ基本を土台にして、実際の仕事の中で一つずつ経験を積んでいけばよいのです。
そして、実務を経験する中で「もっと会計を深く知りたい」と思ったときには、簿記2級などへ学びを広げていけばいいでしょう。
3級で学んだ知識を使って数字を眺めるところから始めてみましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
簿記3級の知識が実務でどのように使われるのかを知ると、次に身につけたい知識や経験も見えてくるかもしれません。
「次は何を勉強しよう?」「2級に進むべき?」「実務に挑戦してみよう?」と迷ったら、こちらの記事で次のステップを考えてみてください。



